名前を呼んで、好きって言って
嬉しかったのと、私のせいでまだ春木君が傷付かなければならないことが悔しかった。
「本当」
どこからか呆れたような声が聞こえてくる。
「翔和ってバカだと思わない?」
全員が入り口のほうを見る。
私は人で誰がいるのか見えない。
でも、声でわかる。
「翠君……?」
ということは、柊斗さんも……?
「お前ら、なんで……」
春木君も翠君たちの登場は知らなかったらしい。
「翔和があんな堂々と動画流すから、気になって来ちゃったんでしょ」
「だったら一人でってのも聞いてたろ。なんで来たんだよ」
「しつこいな。昨日嫌なことがあってストレス発散したい気分なの。悪いけど、僕は囚われのお姫様なんてこれっぽちも興味ないから」
いっそ清々しい。
「お前ら、あの二人も春木翔和と同じ目に遭わせてやれ!」
私にナイフを突きつけている男の指示で、一斉に動く。
ああ、もう。
本当に何もできない自分がもどかしい。
「そして君には少し痛い思いをしてもらうから」
彼の目は本気だった。
私は肩を押され、バランスを崩す。
後ろで手を縛られているから、うまく逃げられない。
本当は声を出したかった。
助けを呼びたかった。