名前を呼んで、好きって言って
「秋保……大丈夫? 怪我、してない?」
こんなときでも、春木君は私のことばかりだ。
「バカ……本当、バカ……」
私はそれしか言えなかった。
恐怖から解放されたのと、春木君が生きていたのとで、涙が止まらない。
春木君は弱弱しく私の頬に触れた。
ぎこちなく指を動かし、私の涙を拭う。
「へへ」
なぜか春木君は嬉しそうだ。
「なんで笑うの……」
「だって、秋保が俺のために、泣いてくれてるのが、嬉しいんだもん」
私が春木君のために泣くことがどうして嬉しいのか、まったくわからなかった。
「そうだ、みんな病院に……」
「君を誘拐して、怖い目に遭わせた奴らだよ? ほっときなよ」
「翠君たちのことだよ」
「なんだ、僕たちか。これくらい藍兄のところで手当てすれば大丈夫だから」
翠君がそんなことを言うから、改めて三人を見てみる。
春木君は言うまでもなく、大怪我。
血だらけだし、骨折とまでは行かなくてもそれなりの怪我はしていると思う。
柊斗さんは目立った怪我はないけど、私を助けるために思いっきりナイフ握ってた。
あれは間違いなく縫う案件だろう。
まあ、翠君はたしかに京峰先生のところで大丈夫そうだ。
「……春木君と柊斗さんは病院に行くべきだと思う。というか、行ってください」