名前を呼んで、好きって言って
「ほかでもない秋保の頼みだから、行くよ」
そして春木君は柊斗さんの肩を借りて歩き始めた。
「翔和、超やられてるじゃん。かっこわる」
「秋保を守ってできた傷なんだから、かっこ悪くないだろ」
「ボロボロの姿ってのがねー」
翠君はふざけて春木君の腕をつつく。
そのせいで春木君は痛がった。
そしてそれを見て、翠君はさらに笑う。
本当に、仲がいい。
「秋保、どうしたの? 帰るよ」
春木君は振り向いて、私を呼んだ。
私を待ってくれている表情はとても優しい。
私は少し走って三人に追いつく。
「……翠君、柊斗さん……翔和君。助けに来てくれて、ありがとう」
改めてお礼を言うと、翠君は照れたのか顔を背けて、柊斗さんは微笑み返してくれた。
翔和君は、目に涙を浮かべている。
「ね、今の俺の聞き間違いとか、空耳とか、気のせいだったりしないよね。秋保、俺のこと下の名前で呼んだよね」
「はいはい、よかったね」
翠君はいつものように冷たくあしらう。
「秋保が名前呼んでくれた!」
大怪我をしていることを忘れたのか、翔和君は思いっきりはしゃいだ。
この勢いで好きだなんて言ったらもっと騒いでしまいそうだから、これはまた今度にしておこう。