名前を呼んで、好きって言って
「何年お前ら見てると思ってんだ。なめんなよ」
つまり先生は、私が連れ去られてこういうことになったとわかっていたということか。
まあ、翠君のお兄さんなわけで、翠君たちが喧嘩をたくさんしてきたことも知っているだろうし。
紅羽ちゃんが私が巻き込まれるかもしれないと思っていたくらいだから、先生が予想していても何も不思議じゃない。
「ごめんな、加宮ちゃん。怖かったろ」
私は首を横に振って答える。
「そういうわけだから、ちゃんと何があったのか説明しろ」
先生に言われて、私たちはそれぞれ何があったのかを説明した。
「怒られるってわかってたから、言いたくなかったのに……」
全てを言い終えて、翠君がそう呟いた。
なるほど、そういうことだったのか。
「怒らないよ。今回の喧嘩はちゃんと理由があったみたいだし、加宮ちゃんは一応無傷だし。怒るところはない」
翠君はラッキー、と喜んだ。
「ただ」
先生の声は少しだけ大きくなった。
「このことは加宮ちゃんの家族にも伝わってる。意味、わかるよな?」
三人はそろって俯いた。
「お前らが加宮ちゃんを危険な目に遭わせた。それは紛れもない事実だからな」