名前を呼んで、好きって言って
空気が重くなる。
私に言えることなんて、何もなかった。
「お前らが過去にやってきたことは消えない。どれだけ噂を消してもだ。自分たちがどれだけのことをしてきたのか、その頭でよく考えろ」
京峰先生の言葉は厳しかった。
怒らないと言っていたのは嘘ではないかというくらい、怖かった。
「翠、柊斗、加宮ちゃんは帰ろう」
先生に言われて私たちは出口に向かう。
だけど、落ち込んでいる翔和君がどうしても気になった。
「……翔和君」
名前を呼ぶと、翔和君は顔を上げてくれた。
でも表情はとても悲しそうで、胸が締め付けられる。
「また、お見舞いに来るね」
私はそれしか言えなかった。
そして先生たちを追って、病室を後にした。
放課後になると、私はまた病院に向かっていた。
すぐにでも翔和君の病室に行きたかったけど、待合室で人を待っていた。
昼間、連絡が来たのだ。
一緒にお見舞いに行きたい、と。
正直このタイミングではお見舞いではなく、お説教になる気がしてならない。
もう京峰先生に叱られた後なのに、これ以上翔和君が追い詰められるのはさすがにかわいそうだ。
そう思ったけど、ダメだとは言えなかった。