名前を呼んで、好きって言って
「秋保」
待ち合わせをしていた相手、美桜と紅羽さんが来た。
美桜はまったく笑っていなかった。
「……ねえ、美桜はどうしてこのことを知ったの……?」
先生はたしかに家族に連絡したと言っていたけど、学校に行っている美桜には連絡は行かないはずだ。
それなのに、美桜は昼のうちには知っていた。
「紅羽のお兄さんが紅羽に連絡してきたの。私はそれを聞いた」
……なるほど。
そこの繋がりは考えていなかった。
「紅羽は、こうなるかもしれないってわかってたんだよね」
紅羽さんは美桜の質問に答えない。
「……もういい。本人に直接全部ぶつける」
もう、誰も美桜を止められなさそうだ。
こんな状態の美桜と翔和君を会わせたくはなかったけど、そんな抵抗をしても無駄のように思えて、私は大人しく翔和君の病室に案内した。
「……秋保」
部屋に入ると、翔和君は私を見て笑顔になってくれた。
帰ったときよりは元気そうだけど、まだつらそうだ。
「紅羽と……?」
「秋保の姉の美桜です」
翔和君はそれを聞くと、頭を下げた。
「ごめんなさい」
文句を言う前に謝られて、美桜は戸惑っているようだ。
「秋保に怖い思いをさせるつもりじゃなかった。でも、俺は秋保をちゃんと守れなかった。本当に、ごめんなさい」