名前を呼んで、好きって言って
「いやー、翔和と会わせたのは失敗かと思ったけど、案外そうでもなさそうだね」
私はからかわれているような気がして、少し恥ずかしかった。
そんな空気を壊すかのように、またドアが開いた。
「秋保! 今日は俺の友達を連れてきた!」
常に元気な春木君だ。
春木君の後ろには、春木君より背が低い、可愛らしい子がいた。
顔つきとか、ふわふわな茶髪とか、纏っている雰囲気とか、とにかく、全体的に見て女の子かと思ったけど、その子はズボンを履いていた。
「げ」
私が反応するより先に、彼を見つけた先生が声を出した。
「翔和、お前……よりによってなんで翠を連れてくるんだよ。そこは柊斗だろ」
知らない名前がたくさん出てくる。
人懐っこい春木君のことだからたくさん友達がいるだろうとは思っていたけど、実際にそういうことを聞くと、仲がいいのは私だけじゃないということを思い知らされる。
「だって、柊斗は秋保を怖がらせるだけだもん。まだ翠のほうがマシかなって思ったんだけど」
春木君なりの気遣いだったらしい。
こういうところのせいで、私は特別なんだと勘違いしてしまうんだと思う。
「ちょっとちょっと。藍兄も翔和もひどくない? 僕、なんかした?」