名前を呼んで、好きって言って
「なんで……」
美桜は声を震わせて訴える。
「なんで先に謝るの? そんなことされたら怒れないでしょ。謝っても許さない人だって思われるじゃん」
翔和君は困った表情をする。
「……いいよ。好きなだけ、思ったことを言ってくれていい。大切な秋保を傷付けるところだった。その事実は、変わらないから」
どうして翔和君がそこまで責任を負うのか、私にはわからなかった。
私は、これ以上翔和君が苦しむところなんて見たくないのに。
「……私は、秋保に幸せになってほしいの。いい人と結ばれて、平和に暮らしてほしい。でも、あなたはダメ。今日みたいなことがまた起きるかもしれないなら、私はあなたを秋保の恋人とは認めない」
「待ってよ、美桜。本当に好きな人と結ばれることが幸せじゃないの? 翔和君だっていい人だよ」
美桜は真剣な表情で私を見つめる。
「わかってよ、秋保。私はもう、秋保に恋愛のことで苦しんでほしくないの」
「……今日あったことは確かに怖かったけど、でも、苦しんでなんかない」
「二人とも落ち着け」
美桜が翔和君に文句を言いに来たはずなのに、私たちが喧嘩を始めてしまった。
紅羽さんが間に入ってくれたことで、お互いに言い合いをやめる。