名前を呼んで、好きって言って
「翔和はどうなんだ」
「……なにが?」
「言われっぱなしでいいのか」
翔和君は視線を落とす。
「……俺は、秋保といたいよ。ずっと、一緒にいたい。でも、藍ちゃん先生が言ってたんだ。過去のことをどれだけ隠しても意味はないって。今日みたいなことは、絶対また起きる。俺が喧嘩してきた相手は、アイツらだけじゃない。また他の奴らが俺らを憎んで、また秋保を狙ったりしたら、俺……耐えられない」
これが、翔和君の本音……
ずっといろんな人に怒られながら、考えていたこと……
「……待って、翔和君……それって、もう私といるのはやめるってこと……?」
「それは……」
否定も肯定もしない。
まさかこのタイミングで翔和君といられなくなるかもしれないなんて、思ってもなかった。
まだ、気持ちも伝えてないのに。
「私から提案なんだが」
重い空気の中で、紅羽さんが手を挙げる。
「学校だけでなく登校中も下校中も一緒にいるというのはどうだろう」
私たちは紅羽さんの顔を見る。
「今回、秋保は登校中、一人になったところを狙われたのなら、一人になる瞬間がなければいいと思わないか?」
「ちょっと待って、紅羽。もしそうだとしても、秋保がわけもわからない恐怖に怯える日々を送らなきゃいけないのは許さないよ」