名前を呼んで、好きって言って
一年くらい前で泣いていたとなると、あのときだろうか。
もう記憶は曖昧だけど、あのときも泣きながら帰った気がする。
「俺、そのとき秋保の泣く姿から目が離せなかったんだ」
それは嬉しいようで嬉しくない話だ。
「制服からどこの中学かはわかったけど、そのときの俺は本当、喧嘩ばっかりだったから、秋保を探すことはできなかった。いつかまた会ったときに堂々と話しかけたくて、俺は喧嘩をやめたんだよ」
……あの人が言っていた、翔和君が喧嘩をやめた理由はやっぱり私だったんだ。
自分以外の誰かのために喧嘩をやめたのかって少し気になっていたから、聞けてよかった。
「保健室で再会ってのには俺もびっくりしたけど……あの拒絶だもん。俺、嫌われたのかと思った」
「その節は本当、ごめんなさい……」
翔和君は笑って許してくれた。
「でも少しずつ秋保と仲良くなれて、今こうして恋人同士になれた。俺、超幸せ者」
翔和君は本当に幸せそうに笑う。
「それは私もだよ」
すると、翔和君の顔がゆっくりと近付いてきた。
私は目を瞑る。
優しく唇が触れ合う。
「秋保、大好き」
翔和君は私を強く抱きしめる。
「……大好きだよ。翔和君」
これからもずっと、私の隣で笑っていてください。