名前を呼んで、好きって言って
しゅうは私のわがままを聞いて、本当に誰とも話さなくなった。
笑顔も見せない。
翠にも、翔和にも。
そのうち、しゅうの周りには翠と翔和の二人しかいなくなっていた。
翠たちにどうして話さないのかと聞かれても、しゅうは絶対に答えなかった。
私はそんなしゅうが見ていられなくて、逃げ出した。
もう話していいと許可を出さずに、逃げた。
「……くー」
しゅうはうちに遊びに来て、私を見つけると絶対に声をかけてきた。
当然だ。
しゅうは、私以外の人と話せないのだから。
それなのに、私はまだしゅうと話せなかった。
中学生になって声変りをしたらしく、低い声になったしゅうは知らない人みたいになっていた。
こんなはずではなかった。
あのとき、無理だと言ってくれればよかったのに。
そんなことはできないと、私を笑ってくれればよかったのに。
もう話してもいいよ、と言ってあげれば済むことだとわかっている。
だけど、それは私はしゅうに興味がなくなったと言っているようなものな気がして、言えなかった。
そしてずるずるとその関係を続けて、私たちは高校生になった。