名前を呼んで、好きって言って
それから秋保といろいろ話して、しゅうにブラウニーを作ることになったのはいいが、それこそいろいろあって約束が先延ばしになっていた。
秋保が翠たちの喧嘩に巻き込まれた一週間後。
その約束を果たす日が来た。
私は加宮家のインターフォンを押せずにいた。
「人ん家の前で突っ立ってたら、ただの不審者だよ」
急に話しかけられ、私は必要以上に驚いた。
「なんだ、瑠衣か」
「入らないの?」
瑠衣は質問をしながらインターフォンを押した。
それでは質問の意味がないと思うのだが。
「……女子らしいことは私には似合わないから、抵抗しかなくてな」
「そんなこと気にしない、気にしない。どれだけ紅羽がかっこいいって言われても、しょせん女子だから」
もう少し言い方はあっただろう。
すると、ドアが開いた。
加宮姉妹が笑顔で招き入れてくれる。
「ていうか、私、瑠衣には今日のこと言ってないと思うんだけど」
「まあまあ、ここは私の第二の家みたいなもんじゃん」
「瑠衣はつまみ食いしに来たんでしょ?」
三人は幼馴染らしく、相当仲がいい。
それこそ、あいつらみたいだ。
「それじゃあ紅羽さん、一緒に作って行きましょう」