名前を呼んで、好きって言って

秋保は可愛い笑顔をしてエプロンをつけている。


「……秋保、ずっと気になっていたんだが、どうしてさん付けで敬語なんだ?」
「あー……なんか、紅羽さんって同級生には思えなくて。紅羽さんも、柊斗さんも。大人っぽいから、つい敬語に」


納得すると同時に、少し嬉しかった。


私はしゅうと同じ、ということか。


「紅羽、照れてるね」
「普通に恋する乙女だね」


美桜と瑠衣はそんな私をからかってきた。


「お前ら、邪魔をするならどこかに行け」
「やだよ。女子やってる紅羽を写真に収めて、お金稼がなきゃなんだから」


……ほう。


「瑠衣、そんなことやってるの?」


秋保は呆れた表情で言う。


「冗談だよ、秋保。でもまあ、紅羽が女子に人気ってのは間違いないけど」
「これだけかっこよかったらそうだろうけど」


秋保は瑠衣と話しながら動いている。
慣れているのか、まったく無駄な動きがない。


「棒立ち紅羽」


横を見ると、二人は私にスマホを向けて笑っている。


「お前ら……」
「邪魔するなら美桜と瑠衣の分減らすよ」


二人に文句を言おうとしたら、秋保がそう言った。


二人はすぐにスマホを下ろす。


「ごめんなさい」
「秋保のおいしいケーキ、いっぱいください」
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