名前を呼んで、好きって言って

あの喫茶店ではかなり気弱イメージを抱いたが、そうではなかったらしい。


「紅羽さん、ぼーっとしてる暇はないですよ」
「……ああ」


そして私は邪魔にならないように、秋保の指示に従って作業を進めた。


「……お菓子作りというのは難しいものだな」
「でも、上手でしたよ」


秋保は褒めてくれるが、ただ混ぜていただけで褒められても、と思った。


「焼いている間に、柊斗さんに手紙書きますか?」
「手紙?」
「あ、忘れてますね。柊斗さんに、もうたくさんの人と話してもいいって手紙を書くって言ったじゃないですか」


そういえばそんなことも言った気がする。


「……いや、いいよ。直接言う」
「言えますか?」


秋保は純粋に心配してくれた。


たしかにあれだけかっこ悪いところを見せれば、そう思われて当然だろう。


「もちろんだ」
「信じられないよねえ」


お前、少しは妹の優しさを見習ったらどうなんだ。


「秋保、今その人たち家に呼べないの?」


おい、何を言う。


「え、今?」
「そう、今。翔和君のお友達なら、翔和君に連絡すれば繋がるでしょ?」


今話しているのは、本当に美桜だろうか。
あれだけ反対していたくせに、翔和を家に呼べと言っている。
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