名前を呼んで、好きって言って
「……いいの?」
「私、嫌われ役をやりたいわけじゃないからね」
美桜がそう言うと、秋保は頬を緩めた。
恋する女子が可愛いというのは、こういうことを言うのだろう。
美桜の許可をもらい、秋保は廊下に電話をしに行った。
「意外だな」
「……だって。秋保、毎日楽しそうなんだもん。一度は引きこもりまでいったのに、今じゃ学校が楽しくて仕方ないって感じで。話を聞けば、翔和君と出会ったから教室に行けるようになったし、友達も増えたって言うんだもん。認めるしかないじゃん、そんなの」
姉として複雑な心情のようだ。
私は美桜の頭を撫でる。
「お前も可愛い奴だな」
「紅羽に言われても嬉しくないから」
「言われたい相手がいるのか」
「……そんな話はしてない」
美桜は急に頬を膨らませる。
やはり女子とはこうあるべきだろうと思わせてくれる。
私には、無理だ。
そんなやり取りをしているうちに、秋保が戻って来た。
「翔和君と柊斗さん、来るって。翠君は嫌がってるみたい」
「だろうな」
秋保は苦笑しているが、これはもう、本当に気にしなくていいことだった。
そう。
本当にあいつのことはどうでもいい。