名前を呼んで、好きって言って

しゅうが来る。


私にとってはそっちのほうが重要だった。


「そういえば、瑠衣はどこに行ったの?」


言われてみれば見当たらない。
味見をすると意気込んでいたから、完成品をリビングで待っているものと思っていたが、違ったらしい。


「眠くなったからって。秋保の部屋」
「はい!? ちょっと美桜、なんで止めないの!」


秋保は慌てて二階に行った。


「見られたくないものでもあるのかねえ」


そんな秋保を見て、美桜は笑っている。


いくら姉妹でも、勝手に部屋に入ることを許可していいはずがないのに。
まったく、何をしているのやら。


そんなことを思っていたら、インターフォンが鳴った。


「お、翔和君たちの到着かな」


美桜が出ようとするのを、私は引き留めた。


「なに、どうしたの紅羽。この期に及んでまだ逃げる気?」
「そうではない。お前、あの日以来翔和に会っていないんだろ。喧嘩吹っ掛けたりしないか?」


美桜は悪い笑顔を見せる。


「それは翔和君次第」


……健闘を祈るぞ、翔和。


「あれ、美桜が出たんですね」


インターフォンを聞いて、秋保が降りて来た。
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