名前を呼んで、好きって言って

「……しゅう、もういいよ」


私があまりにも唐突な発言をしたから、瑠衣としゅうは首を傾げた。


「誰とも話さないでっていうあれ。もう、守らなくていい」
「え、なんで」
「しゅうにはしゅうの世界がある。それを狭めておくのは嫌なんだ」


これ以上話していたら泣いてしまいそうで、私は秋保たちのところに行こうとした。


しゅうは私の腕を掴んだ。


「待ってよ、くー。納得できない。なんでそんなこと言うの? 俺のこと、嫌いになった?」


違う。
そうじゃない。


でも、どう説明すればいいのかわからない。


「美桜ー。紅羽が急に恋愛ドラマ始めたー」
「そっとしておいてあげて、瑠衣。今日はこれが目的だから」


待て、そこの悪乗りコンビ。
この状況を放置するな。


「くー、答えて」
「お前も少しは周り見ろよ」


……しまった。
瑠衣たちにツッコミをする勢いで言ってしまった。


「……ごめん」


しゅうは私から手を離す。


「いや、あの……」


ああ、ダメだ。
上手くいかない。


「柊斗さん。紅羽さんと一緒に作ったブラウニーです。これを食べて、落ち着いて話してみてはどうですか?」


この状況で、秋保だけが癒しだった。
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