名前を呼んで、好きって言って
先生は少し驚いたように言う。
「だって翔和のやつ、保健室に天使がいるから会いに行こうって言うだけで、なんで僕が来なきゃいけないのかまでは説明してくれなかったんだよ」
それはなんだか可哀想な話だ。
私のせいで、妙なことに巻き込んでしまって、申し訳ない。
「まあなんていうか……簡単に言えば、ここにいる加宮秋保の友達増やそうぜって話」
そんな話だったろうか。
たしか、私が教室に行けるようになるために、春木君が呼ばれた。
それは……そうか、仲がいい人がいれば、教室に行きやすくなるのではと、先生が言っていたような気がする。
たしかに、簡単に言えば友達を増やそう、みたいな話になる。
あながち間違ってないのか。
「加宮秋保って、僕たちのクラスの、全然学校来てない不登校の子?」
翠君は私を指さして言う。
これには苦笑するしかできない。
「不登校とはちょっと違うかな。加宮ちゃんはずっと保健室登校してるから」
先生は翠君の人差し指を折り曲げながら説明を続ける。
「保健室登校……だから藍兄と仲良いんだ?」
「そゆこと」
先生が答えるとほぼ同時に、ドアが開いた。
入ってきたのは春木君と、とても背の高い男子だった。
無言の圧力とはこういうことかと思うほど、なんとも言えないオーラがある。
……怖い。