名前を呼んで、好きって言って
「聞いてよ、藍ちゃん先生!」
春木君は泣き叫ぶように言った。
「柊斗の奴、どこにもいなくて探すのめちゃくちゃ時間かかったんだけど!」
「それは大変だったなあ」
先生はどこか棒読みだ。
だけど春木君は気にしていない。
「大切な秋保との時間邪魔されたし!」
……ん?
気にするのはそこなの?
「もう、柊斗。俺に謝って!」
それは横暴すぎではないだろうか。
巻き込んでしまったのは私であって、彼には悪くないはずだ。
それがわかっているからなのか、彼は春木君に謝ろうとしない。
「気にしなくていいよ。柊斗は無口なんだ」
二人のやり取りを見て勝手に慌てていたら、翠君が小声で教えてくれた。
無口にも程があるのではというくらい、彼はまったく口を開かない。
「結構長いこと一緒にいるけど……小学生になったくらいからかな。僕たちも柊斗が喋ってるところなんてほとんど見なくなった」
そんな翠君たちが見たことないと言うのだから、私が見れることもそうそうないだろう。
つまりずっと無言ということ。
……余計に怖い。
春木君が言っていた「柊斗は怖がらせるだけ」というのは、こういうことだったのか。
「で、藍兄。僕たちと加宮秋保が友達になれたら、どうなるの?」