名前を呼んで、好きって言って
翠君はもう面倒そうだ。
本当、私のせいで変なことに巻き込んでしまって申し訳ない。
「加宮ちゃんに教室に行ってもらおうと思ってる」
「へえ。行けば?」
想像以上に冷たい言葉。
翠君には関係のない話で、勝手にすれば?という態度になっても、なんの不思議もないから、意外となんとも思わなかった。
だけど、春木君はそれが気に入らなかったらしい。
翠君の頭を、勢いよく叩いた。
「いったいなあ、もう。何するの」
「秋保は傷付きやすいんだから、そんなふうに言うなよ」
「なにそれ、彼氏面?」
翠君はバカにするように言ったのに、真に受けたのか、春木君は照れ笑いを見せた。
「俺、秋保の彼氏っぽい?」
翠君の目が死んでいく。
「いや、バカっぽい」
「なんで!?」
泣き真似をする春木君は、柊斗さんのところに行った。
柊斗さんはそっと春木君の頭を撫でる。
怖そうな人だと思ってたけど、どうやら優しそうだ。
……見た目は怖くて、近付けそうもないけど。
「君は教室に行きたいの?」
唐突に質問をされ、私は戸惑った。
本音を言えば行きたくない。
ただ先生たちが、私を教室に行かせようとしているだけ。