名前を呼んで、好きって言って
はじめまして
学校は怖いところだ。
学校がすべてだと思っていたあのころは、自分が仲間外れにされているとわかった瞬間、部屋から出ることもできなくなった。
それでも高校に行かないことを、親は認めてくれなかった。
置いて行かれた私の学力でも合格できる高校を受験し、私は合格通知を受け取った。
だけど、私は教室に行けないでいた。
校門まで来て、足がすくんで、裏門から保健室に逃げ込む。
そんな日が何日も続いていた。
「加宮、今日の課題だ」
ショートホームルームの少し前に、担任の立花先生が保健室に課題を持ってきてくれる。
それをやって帰る前に提出するのが、今の私の学校生活だ。
「ありがとうございます」
課題を受け取っても、先生は動かない。
どうしたのか聞こうとすると、先生が先に口を開いた。
「加宮、もう六月になる。そろそろ教室に顔を出してみないか?」
教室に、行く……
想像するだけで息が止まりそうになった。
私は受け取ったばかりの課題の束を床に落とす。
先生はしゃがんでそれを拾う。
「いや、無理して顔を出してほしいわけじゃないんだ。ただ、加宮が思っている以上に、クラスの奴らは悪い奴じゃない。きっとあいつらは、加宮を歓迎してくれるよ」