名前を呼んで、好きって言って
はじめまして


学校は怖いところだ。


学校がすべてだと思っていたあのころは、自分が仲間外れにされているとわかった瞬間、部屋から出ることもできなくなった。


それでも高校に行かないことを、親は認めてくれなかった。
置いて行かれた私の学力でも合格できる高校を受験し、私は合格通知を受け取った。


だけど、私は教室に行けないでいた。
校門まで来て、足がすくんで、裏門から保健室に逃げ込む。


そんな日が何日も続いていた。


「加宮、今日の課題だ」


ショートホームルームの少し前に、担任の立花先生が保健室に課題を持ってきてくれる。
それをやって帰る前に提出するのが、今の私の学校生活だ。


「ありがとうございます」


課題を受け取っても、先生は動かない。
どうしたのか聞こうとすると、先生が先に口を開いた。


「加宮、もう六月になる。そろそろ教室に顔を出してみないか?」


教室に、行く……


想像するだけで息が止まりそうになった。
私は受け取ったばかりの課題の束を床に落とす。


先生はしゃがんでそれを拾う。


「いや、無理して顔を出してほしいわけじゃないんだ。ただ、加宮が思っている以上に、クラスの奴らは悪い奴じゃない。きっとあいつらは、加宮を歓迎してくれるよ」
< 2 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop