名前を呼んで、好きって言って

「翠君には下の名前で呼んでほしいって言われて……柊斗さんは、今苗字知ったし……もし呼ぶなら柊斗さんかなって、思って……」


説明してみるけど、春木君は完全に拗ねてしまっている。


「俺、秋保に翔和って呼ばれたい」
「……ごめんなさい」
「なんで!? 翠はよくて、俺はダメなの?」


ダメというわけではない。
ただ、出会ったときから春木君って呼んでて、今から下の名前を呼ぶのは、なんというか、恥ずかしい。


「呼んであげなよ、秋保ちゃん」
「たった二文字だよ」


またさっきの空気が戻ってくる。
たしかにみんな仲がいいっていうのはわかるけど、どうしてもこの空気には慣れない。


そして目を瞑って逃げていたら、急に静かになった。
ゆっくりと目を開けると、目の前に大きな壁があった。


柊斗さんだ。


無言の圧力だろうか。
しかし柊斗さんが大きくて、みんなの様子が見えない。


「翔和のバカが騒いじゃったけど、この子こういうの苦手なんだって。だから、ゆっくり仲良くなったげてよ。ね?」


少しだけ翠君の横顔が見えたけど、翠君の笑顔も結構怖い。


私……とんでもない人たちと仲良くなったのでは……
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