名前を呼んで、好きって言って

「俺らはバスケだけど、秋保はちょっと待って!」
「はいはい」


その子はバスケのところに「バカ」「すい」「月城」と書いた。


……バカは、春木君のことだろう。
誰も何も言わないってことは、それが当たり前ってことなのかな。


「秋保が活躍するところは見たいけど……でも、秋保が怪我するのは嫌だから……秋保は卓球!」


ものすごく、勝手に決められた。


今も翠君と柊斗さんの出場種目を勝手に決めていたけど、まさか私のまで決められるとは思ってなかった。


「翔和、そこはやりたいものをやらせてあげないと。僕たちと違って、この子はやりたいものがあるだろうし」
「でも……」


春木君は諦めようとしない。
そんな春木君を見て、翠君はため息をつく。


「あんまり自分勝手なことしてたら、嫌われるよ?」


さっきも思ったけど、翠君の一番怖いところって、目が笑ってない笑顔を見せるところだと思う。


毒舌って言われてたけど、ただ素直なだけ、というか。


あの笑顔でいろいろ言われるほうが、多分私は耐えられない。


「それだけは嫌だ!」


春木君の目は嫌わないでと訴えていて、それがなんだか子犬みたいで可愛らしい。
私は思わず頬を緩めた。
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