名前を呼んで、好きって言って

「秋保、俺のこと嫌い?」
「ううん、嫌いじゃないよ」
「じゃあ好き?」


出た、極論。


この場合、友達として好きと言っても、春木君の中では恋愛感情になりそうだ。


下手に好きと言わないほうがいい気がする。


「やっぱ嫌い?」
「いや、そうじゃなくて……!」


ダメだ、いい答えが見つからない。


「漫才はその辺で終わりにしてくれる?」


困っていたら、翠君が呆れたように割り込んでくれた。


「あのな、翠。これは大事なことだから」
「でも今は、競技決めるほうが重要だから。みんな待ってる」


翠君に言われて周りを見ると、みんな私たちを見ていた。


柊斗さんがいるからか、誰も近寄っては来ないけど、私の答えを待っているのはたしかだ。


「ほら、何がやりたいか自分で言いなよ」
「えっと……」


翠君に促されるけど、私は答えられなかった。


みんなが待っているということは、みんな決まっているというわけで、私が入る場所なんてないように思えてくる。


「秋保ちゃん、好きなの選んでいいよ。人数制限とかないから」


さっき春木君を呼んだ子が、優しく教えてくれた。


「じゃあ……バスケで……」
「はーい」
< 27 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop