名前を呼んで、好きって言って
そして彼女はバスケのところに「秋保」と書いてくれた。
あのときすぐに消されてしまったのに、私の名前の漢字を覚えてくれていたことがとても嬉しかった。
クラスメートに優しくされるなんて、いつぶりだろう……
「ちょっと翔和、いつまでふてくされてんの」
「これで秋保が怪我したら、怪我させたやつ全員に仕返ししてやる」
「怖いこと言わないでよ、バカ。てか、バスケなら一緒に練習できるんじゃない?」
翠君のその一言で、春木君の表情は一気に晴れた。
なんというか、単純だ。
「よし秋保、練習しに行こう!」
春木君は勢いよく立ち上がる。
「え、授業は?」
私たちはお互いに首を捻る。
「君、授業受けるなんて真面目だね」
「普通でしょ……?」
「ここじゃサボるほうが普通かな」
普通、とは。
「でも私……授業はサボりたくない、かな」
横目で春木君を見る。
春木君は静かに座った。
「秋保が授業受けるんなら、俺も受ける」
「翔和に理解できるの?」
私を挟んで、翠君が春木君を笑う。
「秋保と一緒ならやる」
「……あっそ」
翠君はつまらなそうに言ったけど、ちゃんと授業を受けていた。
久しぶりの教室での授業は、なんだか楽しかった。