名前を呼んで、好きって言って
先生は机で紙を整え、もう一度私に渡してくれた。
受け取ると、先生は空いた手で頭を掻く。
「まあ、その、なんだ……考えておいてくれ」
先生は申し訳なさそうに笑うと、保健室を出ていった。
私はため息をつくと同時に、近くにある椅子に座る。
立花先生の言葉が頭から離れない。
教室に、行く。
今のクラスに知り合いなんていないのに、教室という単語を聞くだけで、あのころのことが頭をよぎってしまう。
「加宮ちゃん、おはよ」
今日の掲示物を掲示板に貼り終えた京峰先生が戻ってきた。
「おはようございます」
「お、今日の課題届いたんだ。加宮ちゃんは優秀で真面目だから、物足りないんじゃない?」
京峰先生は流れるようにコーヒーを作りに行った。
先生の背中から手元の課題に視線を移す。
「いえ。中学最後はまったく授業に出ていなかったので、私にはこれくらいがちょうどいいです」
すると、京峰先生は小さく笑った。
「多分だけど、その課題ができる生徒はこの学校にはいないんじゃないかな。真面目に授業聞いている奴なんていないから」
先生は私のお茶を机に置いた。
先生の言葉に、苦笑するしかない。
「加宮ちゃんは学校とか勉強が嫌いってわけじゃないんだよね」
私の目の前に座ってコーヒーを飲みながら聞いてきた。
課題内容を全体的に見ながら頷く。