名前を呼んで、好きって言って
どれくらいと言われても、言葉で表現するのは結構難しい。
私は床に転がっているボールを拾うと、数回ドリブルをしてボールを投げた。
柊斗さんほど遠くからは投げられないし、綺麗ではなかったけど、ちゃんとゴールできた。
「まあ、とりあえず翔和よりは上手いって感じだね」
春木君を基準とするなら、そうなるか。
柊斗さんだと、私は下手だし。
「これは僕たちと練習するより、チームメイトと練習したほうが効率良さそう」
「やだ!」
さっきまでゴールできなくてふてくされていたからか、ここでそういう駄々をこねられると、普通に子供にしか見えない。
「実際ゲームは男女別なんだから、僕たちのチームワークがよくなっても意味ないんだよ、翔和」
「でも俺は秋保と練習したい」
翠君は面倒だと言わんばかりにため息をつく。
「仕方ない。じゃあ一人呼んでくるよ。誰か一人でも仲がいい人を作れたら、やりやすいでしょ」
そして翠君は体育館を出ていった。
春木君と、私と、柊斗さんが残る。
春木君はというと、シュートを諦めていないのか、独り言を言いながらボールを投げていた。
なんというか……柊斗さんと二人きりというのは気まずすぎる。