名前を呼んで、好きって言って
「柊斗!」
すると、春木君が柊斗さんを呼んだ。
「この辺で馬になって」
どういう頼みごとだろうか。
何をするのかわからないけど、春木君は柊斗さんにスリーポイントラインより少し前の辺りで前屈みになるように言った。
春木君はそこから数メートル下がる。
本当に、何をするつもりなんだろう。
そう思っていたら、春木君は走り出し、柊斗さんを踏み台にして飛んだ。
……飛んだ?
春木君の手にあるボールは、リングよりも高くなった。
そのまま春木君はゴールをする。
これは……ダンクシュートと言っていいのか。
「秋保、見てた!?」
春木君は勢いよく振り向いた。
見てはいた。
しかしあれをゴールと言ってもいいのかいなか。
「やっぱダンクシュートだよなあ」
春木君は満足そうだ。
でも普通、自分の脚力で飛んでやるものだろう。
あれは、違う。
「秋保もやってみる?」
……はい?
「いや、私は……」
「遠慮しなくていいよ。もし飛ぶのが怖いなら、柊斗に抱えてもらえばいいし!」
お願いだから、人の話を聞いて。
私はそれほどダンクシュートに憧れはないし、やりたいとも思わない。
本当に、いいのに。
柊斗さんは春木君側らしく、手を広げている。