名前を呼んで、好きって言って

「柊斗!」


すると、春木君が柊斗さんを呼んだ。


「この辺で馬になって」


どういう頼みごとだろうか。


何をするのかわからないけど、春木君は柊斗さんにスリーポイントラインより少し前の辺りで前屈みになるように言った。


春木君はそこから数メートル下がる。


本当に、何をするつもりなんだろう。


そう思っていたら、春木君は走り出し、柊斗さんを踏み台にして飛んだ。


……飛んだ?


春木君の手にあるボールは、リングよりも高くなった。
そのまま春木君はゴールをする。


これは……ダンクシュートと言っていいのか。


「秋保、見てた!?」


春木君は勢いよく振り向いた。


見てはいた。
しかしあれをゴールと言ってもいいのかいなか。


「やっぱダンクシュートだよなあ」


春木君は満足そうだ。


でも普通、自分の脚力で飛んでやるものだろう。
あれは、違う。


「秋保もやってみる?」


……はい?


「いや、私は……」
「遠慮しなくていいよ。もし飛ぶのが怖いなら、柊斗に抱えてもらえばいいし!」


お願いだから、人の話を聞いて。


私はそれほどダンクシュートに憧れはないし、やりたいとも思わない。


本当に、いいのに。


柊斗さんは春木君側らしく、手を広げている。
< 31 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop