名前を呼んで、好きって言って
これ、周りから見たらどういう状況なんだろう……
「ちょっと、なんで二人していじめなんかやってんの」
いつもいつも、ナイスタイミングです、翠君。
助かった。
「秋保にもダンクシュートやらせてあげようと思って」
「それ、必要ないし」
翠君は一言で切り捨てた。
「柊斗も柊斗だよ。いつも僕たちの悪ノリに乗ってくれるのはありがたいけど、この子が嫌がってることに気付いてあげなよ」
翠君って、やっぱり思っている以上に優しい。
「……ごめん」
「……え!?」
謝られたことよりも、柊斗さんが喋ったことに驚いた。
翠君が、滅多に喋らないって言ってたのに。
こういうときは喋るのか。
というか、いい声だ。
「バスケの練習なんて面倒だって思ってたけど、いいもの聞けた……来てよかった」
翠君と一緒に来た子がそう言った。
その子は、競技決めのときに黒板に名前を書いてくれた子だった。
「あ、私、安井清花。清花でいいよ」
「清花ちゃん」
名前を呼ぶと、清花ちゃんは満足そうに笑った。
「待った!」
すると、春木君が手を挙げた。
……次の言葉が容易に想像できる。
「……却下、します」
「まだ何も言ってないよ!?」