名前を呼んで、好きって言って

「言わなくてもわかるよ……」


さっきからずっと、春木君にとって面白くない展開が続いているからか、少し申し訳ないことをしてしまった気がする。


「じゃ、このバカは連れて帰るから、君は時間いっぱい安井と仲良くしておいで」


翠君は春木君の首根っこを掴んで進んでいく。
柊斗さんはその後ろを歩いて帰っていった。


「仲良くって言われても、ね」


清花ちゃんは転がっていたボールを手に取り、ドリブルを始める。


「秋保ちゃん、今日アイツらと登校してきたじゃん?」


清花ちゃんは器用にボールで遊びながら、質問をしてきた。


「登校してきたというか、私、ずっと保健室登校してて……春木君たちは、私を迎えに来てくれたの」
「あ、そういうことだったんだ。翔和たちの仲間なら関わらないほうが身のためかなって思ってたんだけど」
「ちょっと前に知り合ったばかり、です」


自分で言いながら、自分でも驚く。
たった数日で仲良くなれるくらい、自分が気を許していたとは。


あんなことがあって、もう誰とも仲良くなれないって思ってたのに。


「え、じゃあ、ちょっと前に知り合ったのに、翔和はうざいくらいの秋保ちゃん好きオーラ出してるってこと?」
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