名前を呼んで、好きって言って
球技大会
球技大会当日、私はいつもより早く起きた。
清花ちゃんたちとお弁当のおかずを作って持ち合う約束をしたから、それを作るためだった。
といっても、私はお菓子担当になったから、作るのはクッキーだけど。
まだ誰も起きていないのか、家の中はとても静かだった。
クッキーだから夜のうちに作ってもよかったけど、人がいてできなかった。
これなら、クッキー作りに集中できそうだ。
「あれ、秋保? 早いね」
クッキーの材料を取り出していたら、姉の美桜が起きてきた。
浮かれていた気持ちがあっという間にしぼんでいく。
生活リズムが完璧な美桜が早起きをしていることに何の不思議もないけど、今日だけは寝坊してほしかった。
「何してるの?」
「別に……」
自分でもわかっている。
実の姉に対して、この態度はない。
でも、まだ美桜と面と向かって話す勇気は、私にはなかった。
「……そっか」
それがわかったのか、美桜は苦笑いをして、顔を洗いに行ってしまった。
一人に戻ると、大きく息を吐き出した。
緊張から解放されたような感覚。
「……作らなきゃ」
私は今起きたことをひとまず忘れ、クッキー作りを再開した。