名前を呼んで、好きって言って

「俺がまだ秋保の手作りクッキー食べたことないのに、清花たちだけが食べるなんて、ずるい!」
「翔和、しつこい」


清花ちゃんが何を言っても引いてくれなさそうだ。


そんな二人のやり取りを見ながら、私はカバンの中からラッピングしたクッキーを取り出す。


「あの、春木君。これで機嫌治してくれる?」


実を言うと、こうなることは予想できていたから、春木君の分は別に作っておいた。


それを見た春木君は、眩しいくらいの笑顔になった。


「ありがとう、秋保」


私のクッキーがもらえて満足したのか、春木君は自分の席に戻った。


「秋保ちゃん、翔和のこと甘やかしすぎじゃない?」


清花ちゃんは私の対応に不満そうだ。


「でも……私が教室に来れるようになったのは春木君のおかげだし……教室に来れなかったら、清花ちゃんとは友達になれなかったし……お礼の気持ちだよ?」
「そうだとしてもさ……」


納得しているような、していないような、という感じか。


ここでさらに本音を言えば納得してくれるのだろうけど、渡したくて準備したと言うほうが、納得してもらえなさそうだ。


というか、これは春木君のことを好きだと勘違いされてしまいそうだし、言わないほうがいいような気がする。
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