名前を呼んで、好きって言って

「一勝って、目標低くない?」
「そうだよ、私たち練習したんだし、二勝はしようよ」


解散しながら、何人かが清花ちゃんに言う。


正直、一勝も二勝も変わらないと思うけど……


「でもま、優勝してもご褒美があるわけじゃないから、やる気にはならないよねえ」


それもそうか。


少しだけ、みんなでスポーツができることが楽しみだと思ってたけど、みんなにとってはそうでもないらしい。


「頑張ったらあれだよ、秋保ちゃんのクッキーがあるよ」


清花ちゃんが言うと、みんなの視線が私に集中した。


この目、さっきも見た気がする……


「えっと、ご褒美になるかはわからないけど……少しだけ多めに作ってきました」
「ナイス、秋保ちゃん」
「超楽しみ!」


急にみんなのやる気が出てきた。


本当にみんな優しいし、こうして私が何かをして喜んでくれると、私も嬉しくなってくる。
先生とか、清花ちゃんが言っていたことは嘘なんかじゃなかった。


「私、このクラスでよかった……」


それは思わず零れた言葉だった。
聞き逃さなかった人は何人かいて、私はその人たちに抱きしめられた。


「翔和が秋保ちゃんに夢中になるの、わかる気がする……」
「これは可愛いわ」


そう言われると、なんだか照れる。
< 39 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop