名前を呼んで、好きって言って
「一勝って、目標低くない?」
「そうだよ、私たち練習したんだし、二勝はしようよ」
解散しながら、何人かが清花ちゃんに言う。
正直、一勝も二勝も変わらないと思うけど……
「でもま、優勝してもご褒美があるわけじゃないから、やる気にはならないよねえ」
それもそうか。
少しだけ、みんなでスポーツができることが楽しみだと思ってたけど、みんなにとってはそうでもないらしい。
「頑張ったらあれだよ、秋保ちゃんのクッキーがあるよ」
清花ちゃんが言うと、みんなの視線が私に集中した。
この目、さっきも見た気がする……
「えっと、ご褒美になるかはわからないけど……少しだけ多めに作ってきました」
「ナイス、秋保ちゃん」
「超楽しみ!」
急にみんなのやる気が出てきた。
本当にみんな優しいし、こうして私が何かをして喜んでくれると、私も嬉しくなってくる。
先生とか、清花ちゃんが言っていたことは嘘なんかじゃなかった。
「私、このクラスでよかった……」
それは思わず零れた言葉だった。
聞き逃さなかった人は何人かいて、私はその人たちに抱きしめられた。
「翔和が秋保ちゃんに夢中になるの、わかる気がする……」
「これは可愛いわ」
そう言われると、なんだか照れる。