名前を呼んで、好きって言って
少し前までは居場所がない学校なんて嫌いだと思っていたけど、こうして保健室登校している今は、学校が嫌いだとは思わなくなっている。
ただ、教室が怖いだけ。
「だいたいの事情は聞いてるけどさ。環境も人も変わってるし、ちょっとずつ挑戦していくのもいいんじゃない?」
先生の言う通り、今のままじゃいけないことはわかってる。
大学に行くなら保健室登校なんてできないし、高校より人が増えてしまう。
社会に出るなんて、もってのほかだ。
人を怖がって逃げていられるのも、時間の問題だ。
そう、頭では理解しているけど……
「まあ、僕としては話し相手がいてくれて嬉しいけどね」
京峰先生がこう言ってくれるから、私もここにいやすい。
つい、依存してしまう。
「加宮ちゃんのクラスかあ」
デスクに向かった先生は、パソコンを操作する。
「あ、翔和がいるじゃん。間違いなく楽しいクラスだな」
私のクラス名簿を確認したらしい。
当然だけど、聞いたことのない名前が出て来た。
「春木翔和。まあ一言で言えば……バカ?」
私の顔に誰?と書いてあったのだろう。
先生はフルネームと彼の特徴を、疑問符がついているとはいえ、はっきりと言い切った。