名前を呼んで、好きって言って
春木君がそんなことを叫んだ。
理由は言わずもがなだろうけど、よく私が柊斗さんのプレイから目が離せなかったことに気付いたな、春木君。
しかし理不尽すぎる。
柊斗さんがゴールしたのも、春木君にパスされたからなのに。
「翔和、勝ちたくないの?」
何もしていない翠君が言った。
柊斗さんの代わりかと思ったけど、柊斗さんが無表情すぎて柊斗さんがそう思っているのかはわからない。
「勝ちたい! でも俺以上に活躍されるのは嫌だ!」
春木君はドリブルはうまいらしく、いつの間にか敵ボールを奪い、ゴール下まで来ている。
すると、柊斗さんがおもむろにかがんだ。
これはまさか。
「柊斗、ナイス!」
春木君は柊斗さんの背中を使って、ゴールを決める。
それは、あの日見せてくれた、ダンクシュートもどきだった。
リングに手が届いたことでみんな盛り上がるけど、次に起こったのは、笑いだった。
あんな馬鹿みたいなことをすれば、笑われて当然だろう。
それに加えて、春木君のあの性格だ。
この展開は予想できる。
だけど本人はできなかったのか、納得いかない表情をしている。
「相変わらず、翔和は馬鹿だなあ」
清花ちゃんは大爆笑をしている。
「あ、いた。二人とも、私たちの試合が始まるよ」