名前を呼んで、好きって言って
午前中の試合が終わり、私たちは教室で手作りのお弁当を広げていた。
楽しい時間の始まりだと思っていたけど、それを囲む私たちの表情は冴えなかった。
「……まさか一試合目で負けるとはね」
「あんな人たちが真剣にバスケやるとか、意味不明!」
そう。
私たちはいわゆる、初戦敗退。
勝つ気でいたのは、私たちだけではなかったのだ。
先輩チームには経験者が多く、とても歯が立たなかった。
「あのクラス、優勝できたら担任のおごりで焼き肉とかケーキバイキングとか行けるんだって」
「やる気の源はそこか……」
そんな会話をしながら、各々お弁当に手を伸ばし始めた。
私もそれに合わせて、楽しみにしていた清花ちゃんのサンドウィッチを取る。
「私たちも立花先生に何かねだっておけばよかったあ」
「そういえば男子バスケはまだ勝ってたよね。今から言ってみる?」
そっか、春木君たち勝ってるんだ……すごいな。
「秋保!」
噂をすれば、春木君の登場だ。
私が食べている途中だというのに、春木君はお構いなしに抱き着いてきた。
「ちょっと翔和、今食事中」
私より先に清花ちゃんが文句を言った。
春木君は大人しく私から離れる。