名前を呼んで、好きって言って
「あいつがいるだけで周りが明るくなる。加宮ちゃんの恐怖も、少しは取り除いてくれるんじゃないかな」
先生は席に戻り、コーヒーを飲む。
「逆に、翔和が加宮ちゃんのトラウマを刺激する可能性もあるけど」
なぜ上げて落とした。
少し希望を抱いたのに。
先生は私の顔をじっと見つめてきた。
「呼び出してみるか。翔和」
思考が停止した。
「荒治療かもしれないけど、いきなり教室に行くより知り合い作って行くほうがいいかなって思ったんだけど……どう?」
悪くないと思った。
なにより、私のために先生が考えてくれたことが嬉しかった。
「……わかりました」
「よし、じゃあ善は急げってことで。さっそく翔和呼んでくるわ」
「え、あの……」
引き止めるよりも先に先生は出ていってしまった。
それからすぐに、一人の男子生徒を連れて戻ってきた。
「こいつが、春木翔和」
先生に紹介された春木君は、私を凝視している。
なにか変なところでもあるのかと怖くなり、私は言葉が出てこなくなる。
「翔和、この子は加宮秋保って言って」
「藍ちゃん先生、俺どこかおかしいのかも」
春木君は先生の言葉を遮った。
「お前の頭がおかしいのは通常運転だろ」
結構酷いこと言っているのに、春木君は全く気にしていない。
「天使がいる……」