名前を呼んで、好きって言って
夏恋ちゃんが笑い飛ばすけど、わざとできないふりをしているという説が頭の中で否定できなかった。
それは麗羅ちゃんも同じようだった。
納得してない顔をしている。
「例えばさ。ずっとカッコ悪かったのに、最後の最後で決めたらめちゃくちゃかっこよく見えない?」
「見えるけど……翔和がそれを狙ってるとでも言うの?」
麗羅ちゃんは私を見た。
「秋保ちゃんにかっこいいって言われるためなら、やりそうじゃない?」
「あー……」
夏恋ちゃんが納得してしまった。
「でも、最初からかっこいいほうが」
「ギャップでしょ。月城が動けなさそうなのにスポーツができて、キャーキャー言われてたじゃん」
夏恋ちゃんの反論を、清花ちゃんが遮った。
その一言で、夏恋ちゃんは完全に納得した。
「……でも春木君、ずっとあの感じだったよ?」
練習のときだって、あの調子だった。
あのときから演技をしていたとは思えない。
「じゃあアイツ、本気で下手なんだ」
清花ちゃんの一言で、夏恋ちゃんと麗羅ちゃんは笑う。
「それなら頑張って応援しますか」
「特に秋保ちゃんは声出してね。秋保ちゃんの声が聞こえたら、翔和はもっと頑張るだろうから」
私は頷いて答える。
そして私たちは声が枯れるまで応援を続けた。