名前を呼んで、好きって言って
打ち上げ
教室を出るときからクラスメイト全員で行動するのは、学校行事を除いて、初めてかもしれない。
「いやー、惜しかったね」
「まさかの準優勝」
男子バスケは、優勝とはならなかった。
ちなみに、春木君は大きな活躍をしていない。
その二つが大きな理由で、春木君は拗ねていた。
「翔和、いつまで落ち込んでんのー?」
翠君は春木君の頬を突っついて遊んでいる。
後ろ姿しか見えないけど、相当落ち込んでいるのがわかる。
「あの子が打ち上げ来てくれるんだから、テンション上げなよ」
そういえば、翠君って私の名前呼んでくれたこと、ない気がする。
苗字ですら呼ばれていない。
ずっと「君」とか、「この子」だったような。
そうか。
仲良くなってるのに名前を呼ばれないのって、結構寂しいんだな。
「秋保ちゃん、翔和どうにかして来て」
隣を歩いていた清花ちゃんが、唐突に言ってきた。
「え、私?」
「翔和のテンションが低かったら、なんか私たちも調子出ないしさ。秋保ちゃんならどうにかできると思うから。よろしく」
丸投げですか。
清花ちゃんは戸惑う私の背中を、勢いよく押した。
私はバランスを崩し、春木君の背中にぶつかった。