名前を呼んで、好きって言って
「秋保……」
重症だ。
自意識過剰と思われるかもしれないけど、私が触れたのにこの反応の薄さは、ありえない。
でも、どうすれば春木君を励ますことができるんだろう。
何を言えば、春木君は元気になってくれるんだろう。
「……春木君、あの……試合、かっこよかったよ」
これでいつもの春木君に戻ってくれるだろうか。
自分がかっこいいと思える場面がなければ、これはただの慰めにしか聞こえない。
嘘だと思われてしまう。
「……本当?」
信じてくれたらしい。
相手が春木君でよかった。
「うん、本当」
どこが?と聞かれても答えられないくせに、私は適当なことを言ってしまった。
でもこれは、春木君を元気にするためだ。
ちょっとくらい、許してほしい。
だけど、私の心配とは裏腹に、春木君はみるみる笑顔になった。
「聞いたか、翠。俺、かっこよかったって!」
……本当、春木君が純粋でよかった。
「はいはい、よかったね」
春木君が元気になった途端、翠君から元気がなくなった。
といっても、多分、春木君をからかえなくなってつまらなくなったのと、春木君のテンションを面倒に思ってるだけだろうけど。