名前を呼んで、好きって言って
「秋保ちゃん、ナイス」
また隣に戻ってきた清花ちゃんが、こっそり褒めてくれた。
「あれで元気になってくれてよかったよ……」
私は安堵のため息をつきながら言う。
「あれを秋保ちゃんが言うことに意味があるんだよ。私たちが言っても、ああはならない」
……理由は聞かないでおこう。
「あ、清花!」
元気を取り戻した春木君は、清花ちゃんを呼んだ。
「いつまで秋保の隣にいるんだよ」
「秋保ちゃんが私の隣にいたいんだって」
そんなことを言った覚えはないけど、事実だから黙っておこう。
「俺も秋保の隣がいいんだけど」
「それは翔和のわがまま」
そして二人は睨み合いを始めた。
「あ、あの、右側が空いてるよ……」
あまり喧嘩を続けられても困るから、私は割って入った。
それを聞いた春木君は、私の隣に立つ。
なんとも満足そうで、私までつられて笑ってしまう。
「秋保は何歌う?」
「え、カラオケなの?」
そういえばどこに行くのかまでは聞いていなくて、私は質問に質問を返してしまった。
「嫌なの?」
「嫌、というか……カラオケは行ったことないし、人前で歌うのは、ちょっと……みんなの歌を聴くのは問題ないけど……」