名前を呼んで、好きって言って

人前で歌うなんて、抵抗しかない。


「秋保が嫌なら、俺もカラオケ行かない」


なぜだろう、春木君ならそう言うと思った。


「僕も歌うのは嫌だな。柊斗だって歌わないし。無難にファミレスにしようよ」


予想外のところから援護された。
というか、私たちの話を聞いていたことにも驚きだ。


翠君の発言に反対する人はいなくて、行先は近くのファミレスに変更された。


「秋保ちゃん、カラオケに興味がないわけじゃ、ないんだよね?」


隣にいたから当然だけど、私と春木君の会話を聞いていた清花ちゃんが質問してきた。


「うん……この人数で歌うのが抵抗あるだけで……」
「そっか。じゃあカラオケはまた今度、私と行こ」


それは突然の遊びの誘いだった。


「行きたい!」
「また清花が抜け駆けしてる」


すると、後ろにいた夏恋ちゃんと麗羅ちゃんは不服そうにしている。


対して清花ちゃんは、ドヤ顔を見せる。


「私たちだって、秋保ちゃんと遊びに行きたいんだけど」
「入れてくれる?」
「もちろん!」


こんな私と遊びたいと言ってくれるだけでも満足なのに、本当に遊びに行ったらどうなるんだろう。
また泣いたりして。
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