名前を呼んで、好きって言って
春木君は理解できていなさそうだ。
「彼女でもないのに、デートなんておかしいし。その子は恋愛に積極的じゃなさそうだし。あんまりぐいぐい行ったら、本当に嫌われるよ」
翠君はよく見ている。
言葉は厳しいけど、あながち間違っていない。
「翔和があれこれ言うことで、その子が困った顔してるの、気付いてないの?」
春木君は私の顔を見つめてきた。
真剣そうに見えるけど、やっぱりわかっていなさそうだ。
「秋保は」
「好きか嫌いかを聞くのも禁止ね。それ、ずるい質問だから」
翠君は春木君の言葉を遮った。
春木君のほうこそ、困った顔をしている。
「……少し落ち着きなよ、翔和」
春木君は柊斗さんのところに逃げるように行った。
柊斗さんは春木君の頭を優しく叩く。
「ちゃんとしつけられてるね」
「清花ちゃん、その言い方は……」
冗談だとわかっているけど、少し嫌だと思った。
「それにしても、翠って結構、秋保ちゃんのこと見てるよね。秋保ちゃんのこと好きだったりして」
「それは……どう、なんだろう」
たしかに翠君は出会ったときから優しい。
私のことを見て、守ってくれている。
でも、私のことを恋愛対象としては見ていない気がする。
多分、妹みたいな感じ。