名前を呼んで、好きって言って

「秋保ちゃん、翠と翔和に同時に告白されたら、どっち選ぶ?」
「ええ……」


好きがよくわかっていないのに、選べるわけがない。


「じゃあ……これから先、誰といたい?」


その質問の仕方は、私の好きな人を聞こうとしているのに似ていた。


「……清花ちゃん、恋愛感情がわからないって言ってたの、嘘でしょ」
「嘘じゃないよ。今のは、漫画の受け売り」


……なるほど。


「たしか……その人が自分以外の異性と一緒にいるのは嫌だなって思ったら、その人が好き……みたいなことが書いてあって。つまり、これからも一緒にいたいって思う人が、好きな人なのかな、と」


そう考えると、わかりやすいかもしれない。


「で、どっち?」
「……諦めてなかったんだね」
「ここまで来たら気になるから」


私は仕方なく考えてみる。


春木君と翠君。
これからも一緒にいるなら……


いや、これは選べない。


じゃあ、私以外の誰かと仲良くしてて嫌だなって思うのはどっちだろう。


……なんて、春木君は誰とでも話すし、翠君は女の子と話しているところを見たことないから比べられない。


だとすれば……もし、春木君が私以外にあんな感じで好きだと言っていたら?
翠君が、私以外にも気にかける子がいたら?
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