名前を呼んで、好きって言って
「は?」
先生は反応に困っているが、それは私も同じだった。
春木くんは私の前まで来ると、しゃがみ込んだ。
真っ直ぐな視線に耐えられず、私は視線を逸らす。
「翔和、離れろ」
春木くんが私のトラウマを刺激していると思ったのか、京峰先生は春木くんの首根っこを掴んで引きずった。
「ちょっと、何するんだよー。天使の顔が見えないじゃん!」
「お前……頭大丈夫か」
先生は軽蔑とも取れる目で春木くんを見下ろしている。
「藍ちゃん先生こそ大丈夫? あんなに可愛い子が目の前にいるのに!」
先生は大きなため息をついた。
私は苦笑するしかない。
「バカだとは思ってたけど、まさかここまでとは……」
先生は文字通り頭を抱えて呟いた。
春木くんは不服そうに頬を膨らませている。
「そこにいるのは、お前と同じクラスの加宮秋保。天使じゃない、実在する同級生の女子だ」
今度はきちんと先生の紹介を聞き、春木くんはまた私の顔を凝視した。
「同じクラス?」
私は小さく頷く。
「天使じゃないの?」
「……違い、ます」
初対面だからか、ものすごく緊張して変なところで区切ってしまった。
「やばい、藍ちゃん先生。声まで可愛いよ」