名前を呼んで、好きって言って
過去の話
私と美桜は仲良し姉妹だった。
姉妹というよりも、親友みたいな感じで、いつも一緒だった。
それが壊れ始めたのは、中学三年の夏休み辺りからだ。
その日、美桜は補習授業を受けに、学校に行っていた。
帰ってきた美桜はなんだかよそよそしくて、でも幸せそうなオーラを感じた。
「美桜、何かいいことでもあったの?」
模試の結果がよかったとか、合格ラインに達したとか、そういうことだろうと思っていた。
「やっぱり秋保にはわかっちゃう?」
だけど、違った。
「あのね……私、告白されちゃった」
「へえ。付き合うの?」
「うん、オーケーしてきた」
恋愛ごとだとは思っていなくて、少し冷たい言い方になってしまった。
だけど、幸せな美桜はまったく気にしなかった。
幸せのおすそ分けとはこういうことを言うのか、なんて思いながら、さっきより興味を持って質問をする。
「相手、私の知ってる人?」
「多分知ってるんじゃないかな……新崎流星君」
その名前を聞いた瞬間、おすそ分けしてもらった幸せは消え去った。
嘘だと思った。
私の聞き間違えだったりしないだろうか。
「ごめん……もう一回、言ってくれる……?」
「え、うん……新崎流星君」