名前を呼んで、好きって言って
それは、私の初恋相手の名前だった。
「秋保、顔色悪いけど、大丈夫?」
「……なんでもない」
笑顔を作るけど、美桜は心配そうな顔を止めない。
やっぱり嘘だとわかるらしい。
「……私、まだ宿題が残ってるから、部屋に戻るね」
これ以上美桜と話していたら、私が新崎君のことを好きだとバレるような気がして、私は部屋に逃げた。
ベッドに体を投げる。
告白する前に失恋するなんて思ってもいなかった。
受験が終わったら、告白する気でいたのに。
もう、できない。
それどころか、姉と好きな人が幸せそうにするところを見るかもしれないなんて。
そんなことを思うと、胸が苦しかった。
本当は声を出して泣きたかった。
でも、美桜に泣いていることを気付かれたくなかったから、私は声を殺して泣いた。
翌日から、私は美桜と話せなくなった。
といっても、いきなりではない。
少しずつ、何か悪いものに侵食されていくように、美桜を憎むようになった。
優しくて、頼りになって、勉強もできて、運動もできて、私の好きな人を恋人にして。
そんな美桜を、嫌いだと思った。
「今回は酷い姉妹喧嘩っぽいね」
数日後、幼なじみの瑠衣にそんなことを言われた。