名前を呼んで、好きって言って
「美桜がかなりショック受けてたよ。秋保が話してくれないって」
そんなことを言われても、今美桜と話す勇気は、私にはない。
「何があったの?」
瑠衣は優しく聞いてくれるけど、答えられるわけなかった。
私は口を噤んで、俯く。
「私にも言いたくないくらい、嫌なことがあったんだ?」
嫌なことと言えば、そうなる。
でも、たしかに美桜のことを嫌いになるくらいまで行ったけど、少しだけ冷静になって、美桜を憎むのは間違っていると気付いた。
気付いたけど、気まずくなった空気を元に戻すことはできなかった。
「……美桜の、彼氏……」
瑠衣に話そうと決めて出てきた声は、自分でも驚くほど小さかった。
だけど、放課後の教室は人がいなくて、それだけでも私の声は瑠衣に届いた。
「美桜の彼氏って……新崎?」
瑠衣が確認し、私は頷く。
「新崎がどうかしたの?」
「私も……好き、なの……」
初めて、打ち明けた。
瑠衣は何も言わない。
当然だろう。
姉妹で同じ人を好きになって、知らぬ間に片方と付き合っているのだから。
私たちの間に沈黙が流れる。
「……秋保は、いいの?」
「なにが?」