名前を呼んで、好きって言って
「美桜と新崎が付き合ってていいの?って聞いてるの」
「……初めは嫌だったよ。どうして美桜に告白したんだろう。私じゃなかったんだろって……」
それで自暴自棄みたいになって、美桜を恨んだ。
「……でも今は、美桜が選ばれて当然だったなって思ってる」
そう。
だから、美桜への恨みはなくなった。
「美桜は可愛いし。優しいし。なんでもできるし。もし私が男だったら、迷わず美桜選ぶし。だからもう、諦めてはいるの」
瑠衣は私にかける言葉を探しているのか、苦しそうな顔をしている。
「ただね……まだ、二人が一緒にいるところを見るのはつらくて……」
「それはそうだよ。そこまで秋保が我慢する必要はない」
瑠衣のその言葉は、思った以上に私の心を軽くした。
「……そいうわけで、美桜と話せなくなったの」
瑠衣はこれでもかというほど、私の髪の毛をぐしゃぐしゃにした。
「ちょっと、やめてよ瑠衣」
私は笑って抵抗する。
顔を上げると、瑠衣は涙を流していた。
「え、瑠衣?」
私が驚くと、瑠衣は手のひらで涙を拭った。
「秋保は美桜が優しいって言うけど、秋保だって十分優しいし、魅力的だからね」
「ありがとう、瑠衣」
誰かに話したからか、その日、私は少しだけ浮かれていた。