名前を呼んで、好きって言って
ここまで誰かに褒められたことがなくて、恥ずかしいと同時にどう反応すればいいのかわからなかった。
先生は呆れてもう一度ため息をついた。
「もう好きにしろ。ただし!」
また春木君の首根っこを引っ張り、今度は私の目の前に座らせた。
「加宮ちゃんとは距離を保って接するように」
「なんで?」
春木君は立ち上がり、私の隣に座る。
「俺、隣がいい」
京峰先生は笑っているけど、額に血管が浮かんでいる。
春木くんは私のことを知らないわけで、人懐っこいのは聞いていたから、これくらいの距離感なのは当然だろう。
近付きたいと言う春木君と、距離を作ってほしい私。
わがままを言っているのは、お互いさまか。
だとしても、春木君が今ここにいるのは私のせいだから、私が折れるべきだろう。
「先生、あの、私、大丈夫です」
「本当に? まあ、加宮ちゃんがいいなら……」
先生はしぶしぶ自分のデスクに戻った。
「ねえ」
先生が座るのを見ていたら、春木君に呼ばれた。
春木君のほうを向くと、春木君はあと数センチで触れてしまうくらい近くにいた。
「いや!」
私は思わず春木君を押し離してしまった。
「あ、えっと……」