名前を呼んで、好きって言って

ここまで誰かに褒められたことがなくて、恥ずかしいと同時にどう反応すればいいのかわからなかった。


先生は呆れてもう一度ため息をついた。


「もう好きにしろ。ただし!」


また春木君の首根っこを引っ張り、今度は私の目の前に座らせた。


「加宮ちゃんとは距離を保って接するように」
「なんで?」


春木君は立ち上がり、私の隣に座る。


「俺、隣がいい」


京峰先生は笑っているけど、額に血管が浮かんでいる。


春木くんは私のことを知らないわけで、人懐っこいのは聞いていたから、これくらいの距離感なのは当然だろう。


近付きたいと言う春木君と、距離を作ってほしい私。
わがままを言っているのは、お互いさまか。


だとしても、春木君が今ここにいるのは私のせいだから、私が折れるべきだろう。


「先生、あの、私、大丈夫です」
「本当に? まあ、加宮ちゃんがいいなら……」


先生はしぶしぶ自分のデスクに戻った。


「ねえ」


先生が座るのを見ていたら、春木君に呼ばれた。
春木君のほうを向くと、春木君はあと数センチで触れてしまうくらい近くにいた。


「いや!」


私は思わず春木君を押し離してしまった。


「あ、えっと……」
< 7 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop